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西大寺鉄道 その21(完結) 〜西大寺市駅〜 [廃線跡探訪]

 西大寺バスターミナルには、観光センター及び「西鉄記念ホール」が併設されています。
 「西鉄」は西大寺鉄道のかつての略称で、ここでは「さいてつ」と読ませるようですが、当然ながら九州福岡を走っている鉄道のことではないようです。
 ただ、ホールといっても小規模で、主として両備バスに関わりのあるセレモニーに使われているようです。
 
 バスターミナルの正面には、廃止時まで走っていた流線形のディーゼルカー「キハ7」が展示されています。が、解説を記したパネル等が周囲に全くない事がやや物足りなく感じられます。
 この車両は1936年製造であることが車体側面の銘板に書かれています。1962年まで26年間現役で働き、廃止後43年間展示され続けていますから、展示されている期間の方が20年近くも長くなってしまった計算になります。

※写真=西大寺バスターミナル正面に保存されているキハ7。戦前・戦中から高度成長期に至る西大寺と岡山の変遷を見つめつつ、備前平野を走り続けました。

 塗装も比較的きれいで保存状態はまあまあよいのですが、さすがに窓枠や、お客さんの自転車を乗せて運んだオープンデッキの柵などの細部は経年劣化が進んでいるようです。特に一時期、デッキの柵の部分にサルノコシカケに似たキノコが群生していたのが残念に思えたこともありました。

 また、このキハ7のパートナーとして走っていた平面顔のディーゼルカー「キハ6」も長らくこの地に残っていましたが、なぜかこちらはキハ7に対するような手厚い保守が施されることもなく消え去ったようです。今から約20年前に撮影されたというキハ6の写真がネット上で紹介されていましたが、見るも無惨な姿でした。

 赤穂線が全線開通し西大寺鉄道が廃止された7年後の1969年2月18日(火)に、西大寺市は岡山市と合併しました。これに先立ち、2月15日(土)には、西大寺市としてのファイナルイベントとなる西大寺会陽が盛大に開催されました。この地にとっては、あの時代が大きな歴史的ターニングポイントであったのかも知れません。
 キハ7の流線顔の2枚窓は、この69年間どんな歴史を見てきたのでしょうか。心あるならば尋ねてみたい思いがします。

 西大寺鉄道は、西大寺の町の人々にとっては、岡山に向かう通勤・通学・買い物のための重要な生活路線でしたが、岡山市内の人々とっては、信仰と観光の路線でした。かつて岡山から西大寺鉄道に乗って観音院詣でにやってきた人たちが、西大寺市駅からたどったであろう参道を歩いてみました。

 西大寺バスターミナル前面を東西に走る大通りを横断歩道で渡った辺りから、1本のやや細い道が南東方向に向かっています。道の入り口には御影石の古い道標が残っていて、西大寺の方向を示しています。
 沿道は小さな個人商店が軒を連ねる、昔ながらの商店街。気心の知れた近所の人同士が互いに売り手になったり、買い手になったりしているような、ノスタルジックな雰囲気が漂っています。

※写真=現在の西大寺市街を南北に走るメインストリート。北望。

 やがて道はゆっくりと左にカーブし、NTTの鉄塔が見えてきます。間もなく西大寺の町を南北に貫く目抜き通りと交差します。この通りの北端はJR赤穂線の西大寺駅に突き当たります。この目抜き通りを横断して更に少し歩くと、西大寺の西門(仁王門よりひとつ南側の門)に到達します。

 西大寺の境内はのどかで、裏手には吉井川が流れています。吉井川にかかる新永安橋の橋上から西大寺の街を見おろしながら、かつて吉井川の朝靄に煙る早朝の西大寺の街中に「ピィィーッ!」と響き渡っていたであろう、西大寺鉄道の始発列車の汽笛の音などを想像してみたりしました。

※写真↓=西大寺付近を流れる吉井川。新永安橋北詰から北望。 西大寺鉄道が渡ることのなかった吉井川を赤穂線は東へ渡り、更に赤穂・相生へと向かって走る。

               〜〜 西大寺鉄道 FIN 〜〜


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コメント 2

 一連の研究には頭が下がります。関連図書の訂正までなさるとは、独自の詳細な調査のたまものだと感心いたします。
by (2006-04-01 21:59) 

邁舞気流

>>jyugemu 様
思っていた以上に長々となってしまった拙稿に、最後まで根気良くおつき合いいただき、恐縮いたしております。コメントありがとうございました。
by 邁舞気流 (2006-04-01 22:19) 

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