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大阪市内の、阪和「地平」線 〜JR阪和線連続立体交差事業〜

 南海平野線のレポートが進行中ですが、長年にわたる鉄路としての使命を間もなく全うする阪和「地平」線の現況を先日見てまいりましたので、割り込みでご紹介します。

 大阪市内の天王寺駅と和歌山駅を結ぶJR阪和線。この阪和線のうち、大阪市域を走る美章園駅〜杉本町駅間の4.9キロメートルが2006年5月21日に高架化されます。
 すでに北行線(上り線)は2004年10月16日に高架化されており、この5月に南行線(下り線)も高架化されると、南田辺・鶴ヶ丘・長居・我孫子町の4駅が高架駅となり、12踏切(南田辺北2番踏切〜杉本町北3番踏切)が除去されます。

 道路や建物が密集し、また地価も高い大都市中心部で行われる高架化事業であるにもかかわらず、この事業には非常に珍しい特徴があります。
 というのは、新しい高架線は、現在の線路の敷地とはほぼ完全に別の敷地の上に建設されているのです。用地買収は今から20年以上前の1984年に着手され、高架化工事が始まったのはその15年後の1999年。

 高架線が現在の線路と別の敷地に建設されているため、工事用の仮線は一切設けられませんでした。そのことによって、長年にわたって親しまれて来た地平ルートの阪和線は、全面高架化の前日まで姿を変えることなく現役として供用されることになりました。

※写真=長池のほとりを走行する103系。東望。南田辺-鶴ヶ丘間。19年前に姿を消した京都・鴨川べりの京阪電車を彷佛とさせます。あちらは地下に潜ってしまいましたが…

 とはいえ、既に北行線が供用されている新しい高架躯体の斜め下で旧北行線の錆びが進行している姿や、また2面4線の新しい鶴ヶ丘駅に敷地の西半分を譲ったために今は単線分のスペースしか残っていない南行線の鶴ヶ丘駅の姿などを見ると、やはり「従容として最期を待つ」哀愁を感じずにはいられません(鶴ヶ丘駅北望…写真↓)。
           
 かつて「開かずの踏切」と呼ばれ、痛ましい踏切事故を繰り返し、その再発防止への切実な願いから溢れかえるほど警告表示を連ねた踏切も、あと約1か月で「閉まることのない踏切」になります(長居公園通の踏切。いまでも周辺に警告の幟が多くはためいている…写真↓)。

5月21日に全面高架化が完了すれば、現「地平」線に装備されている一切の鉄道施設は、大都市中心部の廃線敷の例に漏れず早晩跡形もなく撤去され、ある箇所は道路に、ある箇所は建物や施設の敷地へと転用されて、5年も過ぎれば、かつて線路敷であったことなど想像もできないような姿へと変貌してしまうのでしょう。時代の流れを食い止めることは出来ませんが、長年の使命を立派に果たしたこの「地平」線への敬意を込めて、その姿を記憶としてしっかりとどめておきたいと思います。

高架化されるほぼ全区間、一般道路が並行していますので、現況確認は容易に行えます。ただ道路の交通量も多く、踏切の近くには横断歩道が意外にありません(頻繁に閉じる踏切が実質的に「横断歩道」の機能を果たしていた名残か?)。また「単線化」されたにもかかわらず踏切はかなり頻繁に列車が通過しますから、十分に安全を意識して歩いていただきますよう願っております。


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新愛宕山鉄道

工事計画が地元に発表されたのは昭和46年でした。そのときは阪和の高架より阪神高速泉北線がメインだったので地元では大反対運動が起こりました。用地買収は現実には昭和59年の数年前から始まっており、59年と言うのは用地買収担当者が立ち退き交渉を始めた年です。(私の家もこの年の春に立ち退きで京都へ引っ越しました。)しかし長池の風景も変わりましたねぇ。
by 新愛宕山鉄道 (2006-05-20 21:41) 

邁舞気流

>>新愛宕山鉄道 様
コメントありがとうございます。
35年前に地元に発表されていた、ということは、立案は更に以前だったわけですね。
現地を訪れると、既存線とは全く別の用地が確保されており、かなり長期に及ぶ事業だったことは一目瞭然ですが、その一方で、新愛宕山鉄道さんをはじめ、多くの方々が住み慣れた家を去ることを余儀なくされたということも、心にとどめておかなければ…と感じます。

地平の既存線は昨日をもってその使命を全うし、今朝から、南行線も高架の上を走るようになりました。これからも時折、現地を訪れ、景観の変容を観測していきたいと思います。
by 邁舞気流 (2006-05-21 20:40) 

新愛宕山鉄道

本日高架切り替えを早朝に京都から見に行きました。その昔有人遮断機のころ、警手の人が踏切を渡る通行人にくしばかれていた話は地元では有名です。阪和線では有りませんが近鉄南大阪線の河堀口の踏み切りも開かずの踏み切りでウチの学校では踏み切りが開かないことが遅刻の理由に認められていました。
by 新愛宕山鉄道 (2006-05-21 22:56) 

新愛宕山鉄道

用地の件ですが、今の空き地の部分は元々側道として買収された部分なのでこれに関しては計画どおりです。計画と異なる部分は阪和の既存の高架が一部再利用されたことですね。阪和の高架橋は東住吉と阿倍野の区界だったのですが、どうするんでしょうね?南田辺駅と鶴ヶ丘駅も阿倍野区になるんでしょうかねえ。
by 新愛宕山鉄道 (2006-05-21 23:01) 

邁舞気流

>>新愛宕山鉄道 様
新旧線切り替えの 見学、お疲れ様でした。
思い出になりましたでしょうか?
有人踏切の警手の方も、安全をお守り申し上げている相手から「しばかれる」とはさぞつらかったことでしょうね。ご苦労だったことと思います。


> 計画と異なる部分は
> 阪和の既存の高架が一部再利用されたことですね。

国道25号の架道橋から美章園駅南方までの区間において、
既存高架が継続利用されることとなった点…という理解でよろしいでしょうか?
当初予定にあった高速道路併用の「3階建て高架」構造となれば、
強度上「既存高架を生かす」というわけには行かないでしょうしね。
by 邁舞気流 (2006-05-23 23:41) 

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